5.5帖/2LDK

夫視点で綴る夫婦のこと。【妻黙認ブログ】

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努力と才能とアヒル

世の中に天才などいない。
私の様な凡人が天才と思っている人も、「才能」などという簡単な言葉では片付けられない程の「努力」を積み重ねて来たからこそ、並々ならぬ成果を収めているのだろう。
しかし、人はなかなかそれを認められないものなのかもしれない…

 

突然こんなことを言い出したのには理由がある。
それは先日嫁がこんなことを言い出したからだ。


「ねぇ、見て見てー、アヒル口!」

 

 

まるで出来ていなかった……

 

 

嫁は昔からアヒル口が出来ない。
自分では出来ていると思っているらしいが、客観的に見た場合、夫としての贔屓目フィルターを通しても全く出来ていない。

 

「いや、出来てるっしょ?」
「いや、アヒルには見えないんだよなー……」
「えーそんなはずないのにー」

 

確かに、彼女がアヒル口と表す表情は、唇が前方に突出してはいるものの、角度が足りないのか全然アヒルには見えないのだ。

 

実はこのことに関しては、何年も前から状況は平行線を辿っていた。嫁にしてみれば自分は出来ている」という意識があるので、何の進展もなかったのである。


しかし、この時は少し状況が変わった。

 

「じゃあちょっと鏡見てくる!」

 

そう言うと嫁は大きな鏡を見るべく、洗面所に向かった。
おぉ、これで彼女も客観的に自分のアヒル口を目にすることが出来る!

静かに嫁の反応を待っていると、洗面所から大きな声が響いてきた。

 

 

「全っ然出来てないじゃん!ww」

 

 

彼女もやっと気付いたのである。
しかし、これは悲観することではない。かのソクラテス無知の知を説いた様に、桜木花道がビデオで撮った自分のフォームに愕然としつつも特訓に励んだ様に、嫁もまたここからが真のアヒル口へのスタートを切れるのだ。

 

「どうすれば綺麗なアヒル口になるかな?」
「とりあえず、もっと上唇を上げればいいんじゃないかな?」
「こうかな……? うーん、難しいな……」

 

先程までの自信はどこへやら、彼女は苦戦を強いられることとなった。しかし、私はそれで良いと思った。
板野友美桐谷美玲も、最初から完璧な口元を作ることが出来たのではないだろう。きっと、鍛練に鍛練を重ねて今を作り上げていったはずだ。

 

「もっと唇反らせた方がいいかな!?こうかな!?」

 

何より彼女も楽しそうであった。
結果が全てではない、その過程にこそ大きな意味があるのかもしれない。
私もにこやかにその様子を見ていた。


彼女の上唇は、当初よりも遥かに角度が付いてきた。

 

そしていよいよ……

 

 

チンパンジーの様な表情が出来上がった……

 

 

「これはこれで凄くない!?」

 

嫁は満足げな顔で「反省するチンパンジーの図」を披露してくる。

 

主旨は変わったが、楽しそうなので良しと……していいのだろうか。。

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