5.5帖/2LDK

夫視点で綴る夫婦のこと。【妻黙認ブログ】

MENU

街の風に吹かれて唄いながら妙なプライドを

先週末、スーパー銭湯に行ってきた。
きっかけは、嫁が「めっちゃ近所にスーパー銭湯出来てる!」と発見したことだった。嫁が検索していた画面を後ろから覗き込むと、半年程前にオープンしたようで、確かに立地は本当に近所だった。

 

「何故今まで気付かなかったし!」
「でも今日気づいた自分を褒めたい!」
「今からイメトレしないと!」
などとはしゃぎ出す。深夜1時なのに……

しかし、そこで私の中にふと一つの疑問が浮かぶ。
「おふろ嫌いなんじゃないの?」
先日も書いた通り、普段彼女は入浴することにかなりの抵抗を示す人間だ。
「それは毎日の義務だからでしょっ!?これは能動的なやつだからいーの!」

私には女心、というか配偶者心はさっぱり分からないが、かくして我々はスーパー銭湯に行くことになった。

前置きが長くなってしまったが、今日書きたかったのは嫁のはしゃぎぶり等ではなく、そのスーパー銭湯の中で起こった出来事についてなのだ。

翌日、送迎のシャトルバスに揺られ目的地に着くと、受付を済ませて早速各々大浴場に向かった。

ジェットバス、岩風呂、壺湯、うたた寝湯など、様々な種類の湯を順に巡り、大層癒されたものであるが、その一角に『塩サウナ』なるものを見つけた。何でも、体に塩を塗り込むことによって新陳代謝を活性化させ毒素を排泄し、疲労回復やストレス解消の効果があるのだとか。これは良いものだと確信して室内に足を運ぶ。

サウナの中には先客が二人いた。空いている椅子に腰掛けると、眼前に置かれている塩の山が目に入る。
(なるほど、この塩を体に刷り込めばいいのだな)
片手で塩を掴み、満遍なく全身に塩を刷り込んでいく。
(よし、これで準備は万全だ)

しかし、そこで自分の異変に気付く。

 


とてつもなく左の乳首が痛い!



本当に突然の痛みだったが、思い当たる節が一つあった。前日、ちょうど左の乳首の所に引っ掻き傷を作ってしまったことだ。そこに塩が入り込んだことで、この激痛が引き起こされてしまったということか……
『傷口に塩を塗る』とは、「悪いことの上に更に災難が重なる」という意味の故事であるが、なるほど、その意味を身を以て実感した。

私はすぐにでも外に出て体の塩を洗い流したかった。
しかし、そこで私の中の自尊心が顔を出してくるのだ。

(ここで先にいた二人より先に出たら、我慢強さの無い人間だと思われないだろうか……?)

全く以て意味のないプライドである。しかし、そうと思ってしまったのだから仕方ない。先客が出ていくまで我慢する他ないのだ。何とか痛みを紛らわそうと、腕を組んで乳首を圧迫してみる。気持ち痛みは和らぐが、根本的な解決には至らず、結局目を閉じてひたすら耐えるしかない。
『三月記』に於いて、李徴は、臆病な自尊心と尊大な羞恥心によって虎になってしまったが、私はそれによって乳首を痛めた。

そして、こんな状況で乳首の痛みに耐える自分に逆に面白さを感じてニヤニヤしているうちに二人はいなくなっていた。

 

無事に体を洗い流し、風呂上がりに合流した嫁に事の顛末を語ったところ、「馬鹿なの?」という言葉を貰った。

 

ぐうの音も出ねぇ……

//トップに戻るボタンの設定
//トップに戻るレンジの設定