5.5帖/2LDK

夫視点で綴る夫婦のこと。【妻黙認ブログ】

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浴室までは何マイル?

嫁は風呂に入りたがらない人間である。
いや、このように書くと大層不潔な女性だと思われてしまうかもしれないので、誤解の無いように付け加えると、最終的には入浴するのだが、そこまでのアイドリングの時間が長いのだ。

 


夕食が済み、リビングのソファで寛いでいると、大抵時計の針が21時を回ったくらいで嫁が呟き始める。

「おふろ入りたくない」 

既に慣れっこの私の返答も決まっている。

「そうか、おふろはいれー」
「なんでー!?なんでいつもそう言うかー!?」
「そうだね、ごめんね」
「うんうん、と、言うことは……?」
「おふろはいれー」
「なんでー!?」


このようなやり取りが毎晩のようにある。
しかしその後も、彼女は当然すぐには動かない。

「お風呂場は緯度が違う、寒い」
そんなに毎日おふろに入ったらフルーラルな香りがして次の日仕事に集中出来ない」
「私はしずかちゃんじゃない」
等とよく分からない理由を並べて立ち上がることを拒む。


こちらは何と言われようと延々と「おふろはいれー」しか言わないわけだが、根気よく説き続けているとようやく嫁の心情にも変化が訪れる。

「やっぱりおふろ入った方がよいかな?」
お、少し歩み寄って来たな。
「うんうん、入った方が良いね」
「うーむ……」
「早く入った方がその後ゆっくり出来るよ」
「んー……分かりました!」

ここでやっと決心がついたかと胸を撫で下ろす。
「じゃあブレーキランプ5回点滅させて、『フ・ロ・ハ・イ・レ』のサイン出してー!」


この女は時々理解し難い提案をしてくる……
しかし、それで事が済むなら安いものだ。
私は、パントマイムで車に乗り込み、右足をゆっくり5回踏み込む。
『フ・ロ・ハ・イ・レ』

それに応える様に、嫁はヘルメットを9回ぶつける仕草をしながら言う。
『フ・ロ・ハ・イ・リ・タ・ク・ナ・イ』

いいから早く入れよ!www

そんなこんなで大体30分くらいが過ぎ去る。
私にしてみれば、その30分でさっさと入ってしまえばいいと思うのだが、彼女にその理論は通用しない……

そしてしばらくした頃、ようやく嫁は重い腰を上げる。
「仕方ねー、ふろ入るかー」
「お、いいぞ、入っちゃえー」
「じゃあちょっとおふろ入る支度する、タオル取ってくる」

そう言い残して、寝室に向かう嫁。

15分後。
私が寝室のドアを開けたところで嫁と目が合う。
「HEY!」
「えっ!?」
「『えっ!?』じゃねーよww」

ここまでやってようやく嫁は浴室に向かう。
時既に22時である。
そして、誰しもが毎日苦も無く行う行為を自慢げに語ってくる。
「おふろ入った!」
「そうだね」
「これで文句ねーべ!」
「髪乾かせー」
「なんでー!?」

今日も平和です。

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